ボロズギャラリー (ドイツ)

SAMMLUNG BOROS
(GERMANY)

ナチスの防空壕がアートギャラリーに大変身!?

世界中からアーティストがインスピレーションを求めドイツ首都ベルリンにやってきます。そんなベルリンで今最も注目されているギャラリーが「ボロズギャラリー」。集められた逸材の作品の数々もさることながら、ナチス政権下に防空壕として建設されたという建物は圧巻!
ボロズギャラリーのオーナーで起業家のクリスチャン・ボロズは現代アートの収集家としても知られています。そんな彼の夢はひとつ「集めたアートに囲まれて暮らしたい。」せっかく集めた作品も倉庫にしまったきりではあまりにもったいない。多くに人にも見てもらって初めてアートは意味をなすと考えたボロズは自宅兼ギャラリーを作ることを決めます。

威圧感のある外観

そんな夢のような空間を実現させるために選ばれたのはなんとナチス時代の防空壕。難攻不落の防空壕はかつて3000人もの人々を爆撃から守ってきました。 防空壕のデザインとして珍しかったのが、本来防空壕には必要のない窓や、装飾的な小壁の存在。ヒトラーお気に入りの建築家カール・ボナッツのこだわりっぷりが感じられます。戦時の爪痕とも言える防空壕を最先端のアートギャラリーに改装するというとんでもない改装プロジェクトは2007年に完了し、現在最上階はボロズ夫妻の自宅として、それ下層階はギャラリーとして一般に公開されています。

いかにも難攻不落といった雰囲気

もともと防空壕として設計された建物はその使用用途を時代とともに変化させてきました。刑務所から輸入倉庫へ、かつては世界で一番ハードなクラブとして名を響かせていたことも。建物のいたるところにその名残が伺えます。建物は歴史の目撃者。グラフィティの数々がベルリンの激動の歴史を物語っています。あえてそうした歴史の足跡を残すことで一味違うギャラリーに生まれ変わりました。ボロズギャラリーのユニークなところは、そうした過去のレガシーが展示されているアート作品に影響を与えていることです。リフォームの際に作品と鑑賞者と建物が相互関係を織りなし非日常体験を作り出す、まさに体験型アートです。

歴史とともに変化し続ける建築

例えば注目作品の一つ、写真家トーマス・ルフの作品「Stern(星)」は荒々しいコンクリートの壁面、暗室だったことをうかがわせる黒いペンキの跡が閉塞感を生み出し星空の写真の奥行き感を強調させ、見るものに外界への窓を連想させます。

トーマス・ルフ「Stern (星)」
© NOSHE

ボロズギャラリーで現在展示されているのはボロズのプライベートコレクションの第2弾“ボロズコレクション#2” はアート好きでもそうでなくても必見です。セレクトされているのは主にベルリン在住の現代アーティストの作品。その多くがアーティスト本人の手でギャラリーに展示されるなどまさに「今」のアート作品であると言えます。

その他に注目作品は、著名な中国人アーティスト、アイ・ウェイ・ウェイが英ロイヤルギャラリーで個展を開いた際に話題を奏した作品“Tree”。その一部を間近で見ることができます。異なる木のパーツが継ぎ合わされて出来た6mにもなる巨大な大木が静かに展示室にたたずむ姿は見応えありです。

アイ・ウェイ・ウェイ「Tree(木)」
© NOSHE

ボロズギャラリーは毎週木曜~日曜のみ一般公開されています。訪問は完全予約制で、ドイツ語か英語のツアーを選ぶことができます。予約は公式ウェブサイトから行えます。一ヶ月以上先まで予約が埋まっていることもあるので前もって計画していってくださいね。

Sammlung Boros

about the navigator

yuca
東京生まれボリビア育ちベルリン在住。ドイツの大学院で世界の文化遺産保護を学ぶ。
修士論文の執筆をしながら「旅×カルチャー」をテーマにライターとしても活動中。
訪れた国は38カ国、うち居住国6カ国。留学先で一目惚れしたメキシコに移住を夢見る。
今ヨーロッパのカルチャースポットとして大注目のベルリンを中心に、ヨーロッパ周辺とメキシコ、中南米の不思議だけど美しいカルチャー情報を現地から発信しています!
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