MÜLLVERBRENNUNGSANLAGE SPITTELAU
(AUSTRIA)
金の玉ねぎ? 環境志向でアートなゴミ処理場
アルプスの小国オーストリアは、お隣のドイツと並ぶ、環境にやさしい国です。
その首都ウィーン中心部にほど近い所に、金の玉ねぎの付いた煙突がそびえ立っていますが、これは一体何だと思いますか?
これは、世界的に有名な芸術家が設計した、ゴミ処理場なんです。一度見たら忘れられないアートな外観と、その中に隠された優れたごみ処理テクノロジーをご紹介します。
歴史と建築
このゴミ処理場、最初からこんなに派手に作られていたわけではありません。元々はただの四角い形をした建物がありましたが、1987年に火災で大きな損傷を受けました。
当時のウィーン市長ヘルムート・ツィルクは、この機会にこのゴミ処理場を最新のテクノロジーを使った、地球にやさしい施設に変革しようと考えていました。そのため、自然と調和した建築でよく知られていた芸術家、フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサーにデザインを依頼しました。
このウィーン市の環境志向を体現した、代表的建造物をデザインするという一大プロジェクトに賛同したフンデルトヴァッサー。なんとノーギャラでこの仕事を受け、見事一度見たら忘れられない、奇妙ながらどこか親しみの持てるこの建物を、1992年に完成させました。
フンデルトヴァッサーは親日家でも知られ、大阪の舞洲にあるゴミ処理場やスラッジセンターの設計も手がけています。大阪の施設にもウィーンと似た、トレードマークの金の玉が煙突に付いています。
フンデルトヴァッサーは、直線は自然に存在しないとして、デザインの中で避けるという特徴があり、そのため曲線や渦巻きのモチーフを多用しました。両方の建築に、この彼の特徴がよく現れています。
機能と役割
外観は奇抜でも、中身は最新のテクノロジーを採用したゴミ処理場です。ここはウィーンの家庭ごみや産業廃棄物を焼却するだけでなく、その熱から発電と地域熱供給を行っています。
このゴミ焼却熱によって、ウィーンの5万世帯の電気と6万世帯の温熱をまかなっています。ラジエーターやセントラルヒーティングに温水を通すタイプの暖房が多いウィーンでは、この環境に優しい温水のお世話になっている家庭や企業、学校などがたくさんあります。
この金の玉ねぎの付いた煙突からは、冬場は白い煙が上がっていますが、夏場は全く煙が出ているようには見えません。これは、実は煙ではなく、有害物質も熱も取り除かれた蒸気です。寒い季節になったときだけ、白い水蒸気がかすかに見えるというわけです。
内部見学
建築的にも、環境テクノロジー的にも、見どころの多いこのゴミ処理場。ガイドツアーで内部の様子を見学することができます(要事前予約)。
また、改装25周年の2017年には、煙突の足元にインフォメーションセンターが作られました。ここでは、ウィーンのごみ処理や環境対策、エネルギー資源などについて学ぶことができます。
まとめ
奇抜な外観の中に、優れたテクノロジーが沢山詰まった、環境志向のゴミ処理場。ウィーン人の生活を支えている、頼りになる施設です。どこからでも目立つ煙突に、ウィーン人は心の中で感謝の気持ちを抱いているのかもしれませんね。