シュヴァルの理想宮 (フランス)

PALAIS IDÉAL DU FACTEUR CHEVAL
(FRANCE)

たった一人の手によって作られた理想宮

エッフェル塔、凱旋門、ルーブル美術館、ヴェルサイユ宮殿、モンサンミッシェル…観光客の賑わうスポットがたくさんあるフランスですが、オートリーヴという小さな村に理想宮と呼ばれる建物があるのをご存じでしょうか?

遠目からだと、威圧感のある幻想的な建物

パリから電車で二時間のところにリヨンがあり、そのリヨンからさらに車で一時間ほど走ったところにあるのがオートリーヴ。ここにはかつてフェルディナン・シュヴァルという郵便配達員がいました。町の人々からの評判は良くなく、孤独な人だったそうです。そんな彼は毎日30㎞もの徒歩での配達をしているうちに妄想するになり、いつか自分だけの幻想的な宮殿を建てることを夢見るようになりました。
1879年のとある日、彼は小石につまづきます。そこで石を見ているうちに、夢を実現させようと決意したのでした。
その日をきっかけに彼は毎日郵便配達の仕事をしながら石を拾い集め、夜に宮殿の建設をするようになりました。誰の助けも借りず、たった一人でコツコツと作り上げられた建物は33年後の1912年に完成します。そしてパレ・イデアル(=理想宮)と名付けました。

近くで見ると、不思議な絵や文字が目に入ります
尊厳なアートのような作品

ファンタスティックでありオリエンタルな雰囲気のある不思議な理想宮。普通の郵便配達員が建てたとは思えない細かさです。彼が長年想像し夢見ていたものが現実に存在しているなんて、凄いことですよね。宮殿にはさまざまなスタイルが用いられており、聖書やヒンドゥー教の神話から影響を受けていることが分かります。また、宮殿のあちこちに彼が作りながら残したメッセージが刻まれているのも見ることができます。完成当初、彼は理想宮に棺を納めるつもりでしたが、法律や教会の反対がありその希望は叶いませんでした。そこで次に自分と家族の墓を作り始めたのです。

細かな部分まで、見れば見るほどその魅力に吸い込まれます

1914年から1922年の6年間の月日をかけて完成させた2年後、彼は永遠の眠りにつきました。理想宮は1969年に当時のフランス文化相だったアンドレ・マルローにより文化財に指定されています。現在もクリスマスや元旦の祝日を除いて一般に公開されており、建物には実際入ったり上ったりできます。どの都市からも少し離れた小さな村ですが、ごく普通の郵便配達員だったシュヴァル氏が年月をかけて作った理想宮は訪れる価値ありです!

石でできているとは思えないほど、重厚な造り

Palais Idéal du Facteur Cheval à Hauterives

about the navigator

ELIE INOUE
NYでファッションライターとして3年の経験を積んだのち、パリに拠点を移す。
ファッション、アート、映画などクリエイターへの取材を通して”今のパリ”を発信中。
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