アムステルダム市立美術館 (オランダ)

STEDELIJK MUSEUM AMSTERDAM
(NETHERLANDS)

19世紀の歴史的建造物に隣接する「バスタブ」の正体とは?

アムステルダムに数ある奇抜な建造物の中で、ひときわ目を引くのはミュージアム広場に建つアムステルダム市立美術館の新館です。全長約100m、幅約25mの白い物体は、まるで宙に浮く巨大なバスタブ。およそ10年にわたる大規模改修工事の後、2012年9月23日のオープニングセレモニーでお披露目されました。斬新なデザインは国内外で話題を呼び、地元の人には「バスタブ」の愛称で親しまれています。

ヴァイスマン本館(左)と新館(右)
Photo: John Lewis Marshall

1874年に設立されたアムステルダム市立美術館は、デ・ステイルやバウハウス、ポップアートから新印象派にいたるまで、近現代美術を対象とする美術館です。1895年に開館した本館は、赤レンガのファサードと尖塔が美しいネオルネサンス建築で、アムステルダム市の建築家アドリアン・ヴィレム・ヴァイスマンによって設計されました。オランダにおける近現代美術館では今なお最大規模で、自然光を取り入れた展示室や、荘厳なインテリアが有名です。

新館建設で展示スペースは8000㎡に拡張
Photo: Jannes Linders
改修工事でミュージアム広場側に移設されたエントランス
Photo: John Lewis Marshall

1954年には、美術館の近代化と国際化を推進したウィレム・サンドベルフ館長(当時)によって新館が増設されました。今や世界中の美術館でおなじみの白い壁は、サンドベルフ元館長がアムステルダム市立美術館から流行させたものです。新館のオープン以降、応用美術や音楽、映像などコレクションのジャンルも広がりました。

本館と新館のつなぎ目
Photo: Jannes Linders
バスタブの下はインフォメーションやミュージアムショップ
Photo: Jannes Linders

2003年になると再び、老朽化した設備の修復と、スペース不足解消のための大規模な改修工事がスタートしました。デザインを担当した建築家メルス・クローウェルは、改築の重ねられたヴァイスマン本館を元の形に戻し、さらにその引き立て役として新館を新築しました。本館と新館は一見すると全く別次元の建築物ですが、新館の地階が19世紀の赤レンガを隠してしまわないようにガラス張りになっていたり、「バスタブ」の高さが本館の庇に合わせられていたりと、いたるところに調和のための趣向が凝らされています。

レストラン・ステデレイクは入館料なしで利用可
Photo: Jannes Linders
ファン・バエルレ通りより
Photo: Jannes Linders

軽やかな印象の「バスタブ」は、鉄より5倍も強い複合素材のパネルで覆われ、防弾処理が施されています。コーティングには飛行機の塗料が用いられ、サンドベルフ元館長へのオマージュとして、鮮やかな白一色に塗られました。クローウェルが「つやつや、華やか、真っ白」と誇る新館は、アムステルダム国立美術館やコンセルトヘボーなど、19世紀の歴史的建造物に囲まれて、ひときわ異彩を放ちます。古いものと新しいものが絶妙なバランスで共存する風景を楽しんでください。

Stedelijk Museum Amsterdam

about the navigator

Kayo Temel
オランダ在住。アムステルダムの美術アカデミーで絵画を学び、イラストレーターとして活動中。
16年の在蘭経験を活かして、オランダを満喫するためのローカルな情報をお届けします。
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