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ホテル・デ・ウィンドケテル (オランダ)

HOTEL DE WINDKETEL (NETHERLANDS)

アムステルダムの産業史がギュッと詰めこまれた、絵になる穴場ホテル

アムステルダム西区の閑静な住宅街、ウォータートーレン広場に佇む八角形の古塔があります。園芸小屋ほどの大きさで、守衛室のようにも見えるこの建物、実は知る人ぞ知る「ホテル・デ・ウィンドケテル」です。レンガ造りに木枠の窓、八角形のとんがり屋根は、まるで童話の世界のような外観。もともとは配水施設内の配水塔だった建物が改装され、2003年にホテルとしてオープンしました。

ウォータートーレン広場の中央に建つ「ホテル・デ・ウィンドケテル

ウォータートーレン広場と周辺一帯には、1996年まで稼動した配水施設がありました。アムステルダムの人口増加に対応するため、1897年に建設されたものです。4つの巨大な地下貯水槽には、それぞれ1万立方メートルの砂丘水が貯蔵され、蒸気機関を動力とするポンプ(後に電力に転換)によってアムステルダムの住人に飲料水が提供されました。現在の「ホテル・デ・ウィンドケテル」には当時、ボイラーと膨張水槽がありました。「ウィンドケテル」の名前はボイラー(ケトル)に由来するものです。

1996年、配水施設としての役割を終えた敷地内の建物は、次々に住宅やオフィス、レストランに改装されました。ウォータートーレン広場周辺は、オランダ初の試みとして、自動車が入れないカーフリーの「エコエリア」に生まれ変わりました。そして1997年、近隣住民が目をつけたのが手付かずの小さな配水塔です。宿泊施設に改装する案があがり、有志10名による協同組合が設立されました。プロジェクトは順調に進み、2003年に「ホテル・デ・ウィンドケテル」が誕生しました。

リフォームを手がけたのは建築家のポール・ウエスターマン氏です。床面積わずか18㎡の塔の内部を、3階に分けることで十分なスペースを確保しました。塔の中に一歩足を踏み入れると、予想だにせず広々とした空間が広がります。1階は太陽の光が降りそそぐダイニングキッチン。床暖房で、トイレや階段もコンパクトに配置されています。2階はリビングルーム。GispenのイージーチェアやWoody Woodの切り株ラグ、Montisのソファなど、数世代に渡るダッチデザイナーの作品を満喫できます。螺旋階段の上には屋根裏のベッドルーム。むき出しの天井や梁が味わい深く、天窓からは月明かりが差し込みます。洗面台や二つ目のトイレの他、なんとバスタブまで完備。オランダの匠の技が光ります。

1階のダイニングキッチン
台所用品から食洗機まで全て揃っているので、現地の食材を楽しみたい方にはお勧め
2階への内階段。面積の狭いアムステルダムで螺旋階段はマストアイテム
2階のリビングルーム。床から天井まである4つ開放的な窓から広場の景色が楽しめる
ダッチデザインのインテリアアイテムは随時、模様替えされる
3階のベッドルーム
壁際にうまく納められたバスタブ
むき出しの木材が趣深い天井

ホテルのすぐ隣には、かつて配水施設の機関室だった建物が「カフェレストラン・アムステルダム」としてオープンしています。アムステルダムの住人に飲料水を送り続けた巨大なディーゼルエンジンが、当時のまま保存展示されています。これらホテル(配水塔)やカフェレストラン(機関室)をはじめ、配水施設の遺構はオランダの国家遺産に指定されています。賑やかな中心街のホテルもいいですが、19世紀の産業遺産に触れる滞在もまた一興です。

ホテルの傍にあるウェスターパークには、かつてのガス発電所を再整備した娯楽施設がある
右側の建物が「カフェレストラン・アムステルダム」

Windketel

about the navigator

Kayo Temel
オランダ在住。アムステルダムの美術アカデミーで絵画を学び、イラストレーターとして活動中。
16年の在蘭経験を活かして、オランダを満喫するためのローカルな情報をお届けします。