CUEVAS DEL DIABLO
(SPAIN)
バルやディスコに変身した昔の洞窟
アルカラ・デ・フーカルは、カスティージャ・ラ・マンチャ州アルバセテ県に属する人口1200人ほどの小さな町。蛇行するフーカル川の流れに長い年月をかけてつくられた渓谷に位置します。川沿いの深い緑と、岩山に張り付いた白い旧市街が印象的な景観を生み出しており、スペインでもっとも美しい町のひとつに数えられています。
町を散策すると気付くのが、こんな家々。
ちょ、ちょっと。今にも押しつぶされそうではないですか。よーく見ると岩山をくり抜き、そこに家をはめ込んだようにも見えます。川の向こうにも同じようなつくりの家屋が見えます。
実は、奥は洞窟になっているのです。洞窟の中は夏涼しく冬は暖かいため、昔から一般の住居としても使われてきました。このような洞窟住居は、ここに限らずグラナダなどスペインのほかの地域でも見られます。
旧市街にはいくつかの大きな洞窟があります。もっとも古いガラデンの洞窟は今から約750年前に掘られたもので、その長さは170m。昔はカスティージャ・ラ・マンチャ地方からレバンテ地方に行くにはこの町を通過しなければいけなかったため、洞窟に見張りを置き、通行料を徴収したそうです。イスラム教徒のガラデン王が一時住んでいたことから、ガラデンの洞窟と呼ばれています。
そのすぐ下には、20世紀の初めに家畜用に掘られた悪魔の洞窟と呼ばれる洞窟があり、2つは中にある階段で繋がっています。現在では観光スポットとなり、旧市街にある入口から入って中を見学することができます(有料)。
私が訪れたのは初夏で、洞窟に入るとひんやりとした湿った空気を感じました。昔の生活用品や農工具などの展示や長い通路があるほか、なんと今ではバルやレストラン、ディスコとして使われているのです。夏の観光シーズンは大賑わいだとのこと。洞窟内だと音の反響がすごそうですね。入口から見ると岩山の反対側にあたる場所には、フーカル川を見下ろすテラス席もあります。洞窟の中で一杯飲むのもオツなものです(見学料金にはワンドリンク含まれています)。現在はアルカラ・デ・フーカルの町に惚れ込んだ、元准闘牛士のフアン・ホセ・マルティネス氏が名物おじさんとしてこの洞窟を切り盛りしています。
現代のような技術を持たない先人たちが、手作業で掘った大きな洞窟。アルカラ・デ・フーカルを訪れる際は、ぜひお立ち寄りください。洞窟住居を使った宿泊施設もあるので泊まってみるのもいいですね。